2012年9月9日日曜日

女房元気で留守がいい!?


二人暮らしになって何年になるだろう。
気楽な生活に慣れ、何事もマイペースで、と思ったがそうは問屋が卸さない。
全てが女房殿の指示と命令で動く毎日である。
自分の意思が無くなり、自主性の無い老人に成り下がって行くのが分かる。


そんな折、女房殿が一泊二日の小旅行に出掛ける事になった。
「偶には気晴らしで命の洗濯でもしなけりゃね。」
嫌味か。あと何年生きる積りなんだか。
「誰それに誘われたんで、留守にして悪いけど行って来ますね。」
こう言われれば「少ないが小遣いにでもしたら」、と福沢さんの1枚でも渡すのに、「偶には気晴らしでも」なんて言われれば出せる物も出せない。

もっとも、財布の中には福沢さん一人が奥に引っ付いているだけだから、出してしまえば留守中文無しになってしまう。
ここは男気を見せる場合ではない、と言い聞かせる男パソ爺の我慢のしどころである。


しかし送迎だけは心よく引き受ける。
何しろ2日間解放されるのだから。


さあ一人だ。
見様見真似で昼食を作り、夜は豪華に肴を買い込み心行くまで秋の夜更けを痛飲するか、と思ってみるが独り酒も空しい気がして、結局、朝の残り飯を独りぼそぼそ食べて済ませてしまった。
テレビを遅くまで見て、普段では見ないつまらない番組を見終わり、寝る事にしたが何か変である。いつも傍に居る者が居ないという事が、部屋の広さを広く感じさせ、話し相手の居ない空虚感が漂よい、普段気にしない虫の音色が耳につき寝入りを邪魔する。


朝はゆっくりだ。勝手気ままに過ごせる一日がスタートする。
誰に起こされる事も無く、7時頃もそもそと這い出してコメの在りかを探す。
米を研ぐぐらい手慣れたものだが、最近ガスコンロで直接炊くようになったので戸惑う。
釜をコンロにセットして置いて、ごみの搬出をして来る。
苦瓜に定例の水遣りをして、お茶を入れて飲む。
それから血圧の測定をする。ここまでは何時ものコースである。
豆腐の味噌汁は順調に出来る。味付けには自信がある。
野菜、野菜、何が無くても野菜だけは食べてよ。
子供じゃないんだから、言われなくても分かっている、と言いたいがこれが結構面倒である。
生は嫌だが、茹でるのが面倒。
トマトがある。それにする。
キャベツなどを昼に食べる事にして、しゃけを焼いて一品点ける。
やはり水加減が悪かったせいか、固めの飯が炊けてしまった。


昼の買い出しにコンビニに出掛ける。
かぼちゃの煮付け、ポテトサラダ、キャベツを摂らなければと「大葉とツナ大根・・・サラダ」、この・・・のところを読み落とし、てっきりそこにキャベツが敷き詰められていると思い込み買い込んでしまったが、それはパスタであった。
ミステークだが返品する訳にも行かず、食べざるを得ない。
しかし、コンビニにはあらゆる惣菜が用意され、独り身用に小パックされているのには驚きである。

昼食を摂った後気づいた。血圧の薬を飲む事を。
何時も口煩く言われていたのが言われなかったため、飲み忘れたのだ。


買物は楽しい、こんな楽しい事を女性だけに任せて置くのはもったいない事だと、女性問題評論家の樋口恵子さんが話していたのを聞いた事がある。
と思っても紙切れに買い物メニューが書かれ、千円札を何枚か渡され裁量権の無い買い物では楽しみはない。
小僧の使い走りじゃないぞ!と言いたいがぐっと我慢。
また、金額も不足する事はあっても余る事がないから、余分なものは買えないようになっている。主婦の感はすごい。
そのうえ、品物の在りか、良し悪しの見分け方まで指示されて出かける。
二足歩行、言語認識、自力走行ロボットだ。


夕刻に電話が鳴り、到着時間の指示である。
その通り間に合わせないと何を言われるか知れたものではない。この炎天下であるから尚更である。
夕食は女房殿の手作りに「美味いね、味も丁度だ。」
やはり食事は女房に限る。


ああ、やんぬるかな。こうして秋の夜は更け、こうして二日間は無事過ぎたのである。
こんな生活は観音様の手の掌で立ち騒ぐ孫悟空の様なもので、大の男一匹こんな事で好いのか、などと自問自答するが直ぐ忘れてしまう。


慣れは恐ろしい。

4 件のコメント:

  1. 楽しく読ませていただきました。同感する点が多々ありまして、自分の生活を振り返ってしまいました。強気に出るべきか、反省して生活態度を改めるか、悩みは尽きません。

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    1. 変化自在に、したたかに生きましょう。
      何しろストライキなど起こされたら、おまんまの食い上げです。

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    2. 適切なアドバイスありがとうございました。参考にさせていただきます。

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    3. ひろしさん
      別に参考となる様な事ではありません。
      何れにしても、「女房元気でいて欲しい、死に水は任せたよ。」の心境で居ましょう。

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