2011年6月30日木曜日

高齢者講習は我を知る機会でもある

75歳を迎え運転免許証の更新に際し、6ヶ月前の高齢者講習を受けなければならない。
今年の10月4日が更新期限のため、6月29日に予約したT講習会場で受講した。
この日は入梅の中休みにしては猛暑日であった。
6,000円の受講料を払い込み、開講時間の来るのを待つ。

正式には高齢者予備講習と高齢者講習とに分けられるが、ここでは纏めて高齢者講習と呼ぶ事にする。詳細は末尾に図解を貼り付けて置いたので参考にしてください。

集まっているのは同年代の男性4人、女性1人の5人と思われたが、講座が始まって10分位してもう一人男性が参加したので6人となった。
前日に「1時10分前までにお出掛け下さい」と、連絡が有ったにも拘らず遅刻して来たため、試験官の印象は悪く最後まで気の毒な状態が続いていた。

最初に予備検査として2通の申請書を自書させる事から始まり、受講年月日、生年月日、本籍地、現住所地、名前、振り仮名などを書かされる。
次に、設問用紙が手渡され、先ず今何時かを問われる。
意表を衝かれるが、始まりが1時で遅れてきた人が10分過ぎだからそれから15分程度の経過と考え、午後1時30分として置いた。

次は、試験官が読み上げる50音を逆さに記入する設問である。
「さ、し、す、せ、そ」なら、「そ、せ、す、し、さ」と、記入すれば良い訳で有るが、何を聞き違えたのか、「そ」だけ書いて次の読み上げを待ってしまった。
次の読み上げでこのトチリに気付き、書き足して事なきを得た。

記憶力が試されるのが出てきた。
画面に4枚の絵が交互に4回映し出され、計16の動植物と物品を視認してから声に出して読み上げ、それから思い出させるという記憶力の設問である。
順不同に書き出させるのは16問中13問しか出来無かった。
その後ヒントが出て答えるのは15問思い出す事が出来たが、「果物」の「ぶどう」は全く記憶の外に飛んでしまった。

最後は時計を描かせ、時刻を記入するものである。
丸を描き、中心点を入れ、時刻文字を1から12まで配し、それに試験官の指定する時刻を短針と長針で表示させると言うものである。
余りに単純なので何か引っ掛けが有るのではと、勘ぐる様な設問であるが、認知症の人はこれが描けないのだそうである。

6人は3人づつ2班に分かれ、実地指導と適性検査を交互に受ける事になった。
我々は実地指導に廻される事になったが、運転するのが普通車である。
小生はここ2年ほど軽自動車を使っているので、車幅とハンドル感覚が微妙に違うのが気になる。
しかし、同乗して他の2人のを参考に出来たのが幸いし、一時不停止や車庫入れ、S字とクランク走行の失敗をしないで済んだ。
件の遅刻男性は、シートベルトの着装、座席のスライドに手間取り試験官にあれこれ言われてスタート。
S字カーブでの脱輪、車庫入れでのバックのし過ぎ等々散々である。
「〇〇さん!、バックはどうにするんだい。」試験官。
「バックギャーに入れ、後に気を付けて入れます。」87歳の遅刻男性。
「そうにしてやった?」試験官
「はい」男性。
「していないよう。全然後を見ないでバックしたからぶつかったんじゃないですか。」言葉は丁寧だが、棘のある注意。
「ああそうかね」暖簾に腕押しとはこの事かと、思われる受け方である。
「じゃ次は、ここを出て向うのS字に行って」
大通りを一旦出るのであるから、停止標識が有る無いに拘わらず、ここは停止をして左右確認をしてから向かいのS字に入るべきだが、「行って」の声に停止もせずにS字に入ってしまった。

要は普段通りの安全運転をすれば良いわけで有るが、この運転が公道を走行しているかと思うと危険を感じざるを得無い実地走行である。

二人目も同じ様でシートベルトの位置が分らず、うしろから此方が手助けをしてやる。
「△△さん、ギャーは入替えながら走行してよ。」試験官。
言われてみるとセコンドと半クラッチ状態で走行している様だ。
「耕運機の運転しかしていないからね、つい癖が出てしまうんですよ」
踏み切りは停止せず横切って行くし、農道での運転そのままである。
「事故たら大変だよ。」試験官。
「見通しのよい所を運転してっから」
「そういう問題じゃないんだよ」試験官。
こうして2人目が終わり、小生の番である。

シートベルトをして、座席を若干移動させ、フットブレーキを踏みながらサイドブレーキを外し、左右確認しながら徐々にアクセルを踏み込んで停車位置からスタート。
何と模範的な出だしであろうか。我ながら惚れ惚れする出だしであるが、ハンドルが重い。
普段の軽自動車に比べ、何と重い事か。
クランクやS字走行、車庫入れでは切り替えしが間に合わず、車体を前後しなければならなかった。ここは不本意な出来である。
しかしながら、他の二人が何の疑念を持たず直進していた走行車線上の障害物では、それを避けるために対向車線をはみ出るウインカーを出した事はGOODで有ったと、自画自讃。

こんな事で半日が過ぎ、会場から開放されたのは4時半過ぎであった。
高齢者が増加し、こうした適性検査を受ける者が年々増えるのであるから会社としては商売益々繁盛であるが、午前・午後とこれに付き合う試験官は大変な根気が必要である。
中でもおばちゃん連が煩いそうで、何か言えば倍返しで言ってくるそうである。

そう言えば、身近でも同じ現象が起きている。
あれは持ったか、道順は忘れていないか、暑いから安全運転で行ってよ等々、今日のこの高齢者講習に出掛けるに当り、言われ通しであった事を思い出した。


高齢者の免許更新の流れ

2011年6月23日木曜日

パソコン教室は花盛り

1ネズミをば手に汗して握ってる
高齢者パソコン教習の難関の一つがマウス操作である。
マウスは「握る」と表現すべきか、「手の平で包む」と説明すべきか。

「みなさん、今日からパソコンの勉強をします。此れがマウスと言ってパソコンとやり取りするモノです。日本語でネズミと訳します。」
「マウスの頭の部分に人差し指と中指を乗せて持ってください。」
長年労働した指の関節は硬く、大きな手の平はマウスを持って有り余ってしまう。
「かるーく持って動かして見てください。」
「画面の中で矢印が動いているのが分かると思います。その矢印を画面の絵(アイコン)に合わせてカチカチ(ダブルクリックの事)と人差し指で押して見てください。」
此れが出来ない。指が硬直してリズミカルに出来ないのだ。

最近は「叩いて見てください。」と表現しているが、どうもしっくり来ない。
マウスの固定とダブルクリックのタイミングも合わないのだ。
「男の手で悪いネ。」と言って受講者の手を上から添え、指でダブルクリックをして見るが、ポインターが動いてしまう。
「手のたなごころをマウスパッドに固定して、その昔、初恋の人の手を握ったようにマウスは軽く持って見て。」
「人差し指は素早く二度カチカチと、カチカチと、もう少し素早くカチカチと・・・・。」
何の事は無い「かちかち山の狸」の口上である。
コントロールパネルでマウスの調整をするが、此れだけは慣れしかないようである。
最近はマウスのクリック練習ソフトがあるが、これでも難関である。

人差し指と中指が交互に動かせない人も居る。
「メニューバーの[ファイル]をクリックしてみてください。[新規作成]とか[開く]などのメニューが出てきますよね。」
「ウ~ン?[標準]」とか[書式設定]があるよ。」
「え~?そんな訳無いでしょう。」と画面を覗く。
確かに見慣れないメニューが表示されている。
「欄外でクリックして、もう一度やって見せてください。」
ポインタを恐る恐る[ファイル]に合わせ、カチ。
出るのだ。ズラーと見慣れないメニューが。
しかしどこかで見たメニューだ。
「もう一度やってみて。」
繰り返す。
よくよく見ていると、人差し指と中指が同時に動いている。
気持ち中指が速く動き、右クリックと同じ操作をしている。
その為、メニューの[表示]→[ツールバー]のサブメニューと同じメニューが表示されているのだった。
「人差し指だけ動かしてね。」
また上から手を添えて「こうね。」と、人差し指に重ねて見せて解決。
しかし、また同じ事をするような気がする。驚異の2本指クリック操作。

2パソコンでローマ字習う戦中派
次の難関はキーボードからの入力である。
「文字入力をします。」
「ローマ字入力は、「あ」が「A」、「い」が「I」・・・」と入力の手解きをする。
「“あいうえお”と入力して見てください。」
Aのキーを押しっぱなしにするから、「あああああああ・・・」となってしまう。
「ぽんと叩き、すぐ離しましょうね。」
「い」・「う」・「え」・「お」。
往年の王選手一本足打法ならぬ、人差し指一本で全てのキーを探しに行く。
左手はひざの上に置いたまま。

最も困るのは専門語である。
「メニューは、パソコン機能の一覧表と思ってください。」
「・・・・・・?」
「ツールとは、パソコンを素早く操作する機能の事です。」
「・・・・・・?」
「マウスと連動するのがポインターです。機能に合わせクリックすれば有効になります。」
「・・・・・・?」
「カーソルは、文字を入力する位置です。」
「・・・・・・?」
「ドラッグは、マウスのボタンを押したまま移動させる事です。」
「・・・・・・?」
その都度解説をするが、チンプンカンプンである。
だからでもないが、ここだけの言葉にしたものがある。
「テキストの折り返し」は「犬の力を借りる」を使って図を動かす。
「ドラッグ」は「引きずり」
「ダブルクリック」を「カチカチ」などなど。
どの教室にも「かな入力」者が2・3人は居る。
鬼畜米英の時代に青春を迎えた人や、ワードプロセッサで「かな入力」が身に着いてしまった人は「ローマ字入力」は大変である。
70歳台のOさん、「かな/ローマ字早見表」を自分なりに作り、1字1字読み替えてはキーボードの英字を探し入力するが、促音(っ)、拗音(ょ)に手間取ってしまう。
その内、周りの人がじ~と待っているのが気になり、焦ってくると余計に探せなくなりとうとう辞めてしまった。
その後、入力方法を自由にする方針に切り替え、「ローマ字入力」と「かな入力」の混在教習にした結果、再入学して「かな入力」でスタートをしたところ、現在では老人会の書記を担当し名簿作りは言うに及ばず、催事のチラシや入場券まで作るほどに上達した。
中高年パソコンは、好きなようにやらせるのが一番だ。

3全身がフリーズしている高齢者

「では、もう一度やってみましょう。パソコンを初期状態に戻してください。」
「?????」
「今開いている画面の右上の×を矢印でクリックして終了するんですよ。」
「ここかい。」
「矢印が見当たらないんだよ。」
「ねずみが机の端まで来てしまって進まないんだけど。」
「線が絡まって邪魔くさいね。」
「画面が小さくなったよ。どうして。」などなど。
隣の人に聞いたりマウスを持ち上げたりと、ざわつきはじめる。学級崩壊寸前だ。
「ハーイ皆さん、こちらを見てください。ここの右隅の×を矢印でクリックすればいいんですよ。隣の[元に戻す]や「最小化」ボタンを押しては駄目です。マウスが机の端で行き止まりになったら、そのまま元に戻して転がせばいいんです。」
30分前にした操作を繰り返してみる。

ようやく全員が初期画面になったところで再開する。
Wordを開いてください。」
デスクトップのアイコンをダブルクリックする人は、手の掛からない人。
「どこどこ。」と探している人は、今後思いやられ人。
「ワード?そんなのどこにも無いよ。」重点指導を必要とする人。
「デスクトップにWordのアイコンが出ていないパソコンは、[スタート]から探してみてください。Wが四角になっている絵ですよ。」
「あったあった。で、どうするんだっけ。」鶏の三歩。
「マウスをカチです。」
「カチカチじゃあないんだね。」
「そうですよ。」あくまでも優しく。
「どれがカチカチで、どこでカチなんですか。」横から聞いてくる。
ダブルクリックとシングルクリックの使い分けに話が発展する。
「簡単に区別するのは、ポインターを重ねて色が変化するアイコンはカチ、それ以外はカチカチと覚えればいいと思いますよ。」本当?

今年80歳になる教室の最高齢者。
こうしたやり取りが行われている間、じーっと画面に向き合い微動だにしない。
「どうしました。」
「画面が動かないんだよ。」
「フリーズしたようですね。」
「え?」
「パソコンが操作に行き詰まって、ソフトが固まったらしいんです。」
「そんなもんかね。」
「最初からやり直しましょう。」で呪縛から解き放す。

4習うほど忘れる事の多かりき
先週祝日だったので2週間ぶりのパソコン教室である。
「前回作った会報をパソコンの画面に出してください。」
案の定「出ない!」「入っていない!」と言う騒ぎが起る。
「保存先をFDにしましたか。」「マイドキュメントにも無いですか。」
USBメモリーの人もいる。文書が見つからない人はパニック状態で騒いでいる。
中を覗いてみるが確かに保存されていない。
そこでまた、一通り保存の仕方を確認する。
「ファイルをクリック、名前をつけて保存をクリックして、現れた画面の保存先の場所を指定しますよね。」
「何処から指定するんですか。」
「保存先の右にある逆三角をクリックして、FDを指定します。」
「???」
雰囲気から察するに「マイドキュメント」に名前も付けずに直接保存したらしい。
「一旦終了してマイドキュメントに戻りましょう。」
「文書と言う保存した名前が有りませんか。」
「文書1・2・3といっぱい有るよう。」
それを一つずつ空けて見る。
その中からようやく見つけられた。名前も付けずに保存してしまったのだ。
ようやく全員の足並みが揃った。ここまで20分が過ぎる。
「今日は、飾り文字や出来合いのイラストで会報を完成させます。
見ててください。メニューバーの[挿入]をカチ、下に出たメニュー表から[]を選んで[ワードアート]をカチとします。
すると[ワードアートギャラリー]のパネルが出ます。この中から好きなもの選びます。では皆さんここまでしてみましょう。」で始める。
マニュアルを見ながら操作して行くのだが、早い人で5分、手が出ない人もいる。
プロジェクターで写しながらの説明であるが、受講者のツールバーが3行も4行も表示されて同じでないため、どこに何があるのか手が出せないでいるのだ。
整理して講師用の画面と同じにしてようやく始まる。
「そこまで出来たら次はタイトル[町内会 NEWS]と入れます。」
書体やサイズの変更も話す。
文字入力が出来ても、英字の入力は慣れない。
「何処を押せばいいんですか。」
「間が空き過ぎているようだわ。」
[ここに文字を入力します]が残ってていいですか。」
「良くないよ。」
高齢者にとって、たった7字の英字混じりを入力するのも大変だ。
こんなやり取りしているうちに休憩時間が来る。

「余り根をつめると血が固まるから血流を良くしましょう。
背伸び運動をしま~す。関節を柔らかくなるように手首をぶらぶらさせましょう。では、血を薄めるためにお茶の時間にします。」で、わいわいがやがや。
「この茄子漬旨いね。」
「夕べ漬けたばかりのだから。」
こうして20分の生き抜きをして次の時間が始まる。
[町内会 NEWS]が文書の真ん中に出て動かない。」
[
テキストの折り返し]を「犬の力」を借りると表現して動かせるようにする。
「変なデザインだから直したいんだけど。」
「選んだ図柄で性格が出るらしいよ。」
「イヤダー。」
[
図の書式設定]で直せることを話す。
かくしてタイトルも、イラストも難産の末に[挿入]出来、最後は[保存]である。
もう一度[保存]の仕方を話す。
何度も同じことを話すのが高齢者パソコンの習得の極意だと思う。
「来週はここからスタートしますからね。折角の文書が無くなっていたら大変だよ。」
しかし、この段階でフリーズしてしまったパソコンが2台発生。
サポーターの必死の努力にもかかわらず、復元出来ずに時間となってしまった。
「ああ~私の作った文書はどうなってしまうの。」
悲痛な嘆きを残し、本日は終了。

5絵心が無いから描くパソコンで
「今日は、[図形描画]を駆使して、道路や鉄道、公園、郵便局を案内図に作ります。」
「[描画キャンバス]を表示します。メニューバーの[挿入]、その中の[図]にポインターを合わせるとサイドメニューが出ます。その中の[新しい描画オブジェクト]をクリックしましょう。」
受講生の皆さんは、何やかにや言いながらマウスを片手にポインターを目指す項目に合わせクッリク。
バーンと[描画キャンバス]が画面に広がる。
「ウワー変なのが出たよ」と、声を挙げた方は正常操作、
「う?」とか、「文字が何処かにイッチャター。」、折角[図]にポインターを合わせたが、力余って隣のメニューをドロップダウンしてしまう人などなど、3ヶ所を辿る操作は大変です。
どうやらキャンバスが表示でき、皆さんが揃いました。
「この中に、[図形の調整]にある四角をクリックして、こうして地図を描く場所を作ります。」
「四角をクリックするとポインターが十字になりますから、左上に合わせ右下に引き下げます。」
「何処まで下げたら良いんですか?」
「キャンバスの4分の1程度で止めて指を離してください。四角が出来ましたか?」
これが躓きの第一歩、苦戦の序奏であった。
キャンバスに馴れない上に、図形や直線を描くのに狭すぎたのである。
「[Shift]キーを押しながら線を引きます。選択されている状態で[線の種類]で拡張工事します。」
「メイン道路は太線にして、そうでない道路は細くして縦横に道路工事をしましょう。」
「[オートシェイプ]を使い、六角形、星型で建物の図形を作ります。」
「[テキストボックス]で、文字を入れましょう。」
「道路や公園に色を付けます。」
「文字の周りの黒線を消します。」
ここまでで、幾つの操作をしたでしょう。
休憩20分を除いて2時間で来てしまった。
ただ言われるがままに操作をしていただけと言う方が殆どで、全く頭の片隅にも残らない雰囲気になった。
そこで方針を転換、グリッド線を方眼紙状に表示して始める事にした。
一般的にWordの初期画面は白紙の状態であるから、皆さんはグリッド線など初めて見るものでした。
「これは、普段は見えないようにしてあるだけで、画面にはあるものです。」
「だから、ここにチェックを入れるとこの様に横罫が薄く見える様になりますが、印刷はされません。」
「此れなら場所取りが楽だね。線も引きやすい。」
やる気だ出てきたらしい。

6やって見せやらせてみても未だ出来ず
「先週の道路工事は測量も不十分でしたから不揃いで、略図としては不合格でしたから、目安を付けられる様に5ミリ方眼紙状のグリッド線の出し方の操作をします。先にやって見ますから、手を休めて見ててください。」
一同の視線をプロジェクターで映されるWord画面に集中させることにした。
今までは説明と同時に操作もして貰っていたが、ものの2.3スッテプで行き詰まる人が大多数で、そこからの説明が耳に入らず、遅れを取り戻そうとパニックになっていたことがサポータからの進言で分かった。
これまでもそうして来た積りであったが、何時しか時間を節約することが優先して説明と同時操作になっていたのである。
「グリッド線のパネルが出たらここにチェックを入れて置きます。そうする事で、線に吸着性が出てオブジェクトが貼り付くので、[Shift]キーを使わずに直線が引けます。」
「チェックを外せばこの様に自在に貼り付けられますが、入れるとグリッド線に支配されますよね」と実演して見せたが反応が無い。
「やって見て」
「見ててと言われたから何も出ていません。」
素直にWordの初期画面のままで居たのだ。
何時もの同時進行になっていたのだった。
「そうでした。」
こうして一通りグリッド線の設定と消し方の説明が終わり、実際に操作に入る。
「では、公民館を中心に略図を描いて見てください。」
方眼紙状のグリッド線に沿って道路を入れ、建物も位置合わせをしながら描いて行く。テキストボックスで名前を書き込み出来あがりである。
大方の人は2・30分で完成したが、kさんは8分どおり出来上がったところでWordが閉じてしまった。
保存をしていないから最初から描き直しになってしまった。
「何処を触ったんだい。」
「いやぁ、何処も触った覚えが無いんだけど。」
テキストボックスも、書式設定の仕方を説明しないでしているから「文字が半分消えてしまった」とか「変換しても文字が出て来ない」などの声があがる。
「枠を広げれば出てるょ。」
[
塗りつぶし][線なし]は前回も話してあるから出来る人は黙っててもしているが、忘れている人はそのままになっている。
これは纏めて説明する事にする。
「お茶の時間ですが・・・」
「書き込みが出来ない内は駄目です。」
「・・・・・・」
お遊びの中にも厳しく、真剣に、徹底的に。

7省資源どこ吹く風と印刷し
「今日は印刷をします。」
「ランケーブルをパソコンとハブに接続します。」
「どこどこ。」またがやがやと、ランケーブルを持って右往左往。
「線の先がパソコンの入り口に合わせ、差し込んでくださいね。」
「じゃ、[ファイル]をクリック、[印刷]をクリックしてください。」
「え?ナニナニ。」
初めての操作は何時もこうである。
ようやく足並みが揃い、印刷の設定も出来、スタート。

順調に皆さんの作品が印刷されてくる。
「あれ、同じものが出てきたよ。またでてきた。誰のですか此れは。」
「私のでーす。」
「どうして何枚も印刷されるの。」
「さっきから、OKをクリックしても印刷されないので何回もOKしていたんです。」
「印刷機も一遍に印刷OKとされると渋滞を起こし、直ぐには出てこないことが有ります。」
「でも、私より後からOKした人が先に出てくるんですよ。」
「あまり何度もOKしたから、印刷機に嫌われたんじゃないですか。」
「・・・・・・・」

8Eメール着いたかどうか電話掛け
「前回のメールの学習で、お家で実際にメールを試して見ましたか。」
「しました。」元気な声が返ってくる。
「何方にメールをしましたか。」
離れて暮らす孫や娘が多い。
「しかし何だねえ。メールは手間が掛かって仕方が無いよ。」
「どうして。」
「電話帳みたいに番号案内が有る訳ではないし、アドレスの英字をいちいち入れなくてはならないしね、その上、確認しなければならないのだから。」
「?」
「だって送信した後に着いたかどうかを、電話を掛けて確認しなければならないのだから。その上、電話をかけたら留守電になっているので、メールを送ったので返事を貰いたいと言付けなければならないし。」
「そんな大切なメールを出した訳?。」
「いやあ、“ばあちゃんもパソコン教室でメールを習ったので返事くれ”と、書いただけ。」
「メールアドレスは他人にやたら教えちゃー駄目ですよ。」
「どうしてだね。」
「特に知らない人からのメールには返事を出しては駄目ですよ。迷惑メールが山の様に入ってくるんです。」
「どんなものがあるんですか。」
「融資の誘いとか商品の販売、一番悪質なのがウィールスを送りつけてパソコンを動かなくされてしまう事も有ります。」
「メールはしないほうがいいね。」
「安全対策さえしていれば、そんなに恐れなくてもいいですよ。」
「よく聞く架空請求書も同じなんですか。」
「そうです。人妻は悶えているなどと書いてあるメールをうっかり開くとアドレスが分り、送られてくるらしいですよ。そうしたメールは誘惑に負けずに削除してしまいましょう。特に男性は気を付けで下さい。」

9パソコンも風邪を引くかと聞いてくる
この日の休憩時間。
隣り合わせになったNさん。
「それはそうと、さっきウィールスが送りつけられると言っていたが、パソコンも風邪を引くんかね。」まじめな顔で聞いてくる。
ウィールスはインターネットの世界で流行しているし、メールなども感染するんですよ。」
「へ~、この間病院でA香港のワクチンを打ってきたが、パソコンはどこへ持っていけばいいんかね。」
病気のウィールスと勘違いさせてしまったらしい。
「ウィールスといっても病原菌ではなく、他人が悪戯や悪意を持ってパソコンに侵入して来ることです。」
「そんな小さなもの、どうやって侵入させるんかねえ。」
どこまでも人為的なソフトである事が理解出来ないらしい。

10ソフトなど気にすりゃパソコン使えない
教室は、全てパソコンが設備されている場所とは限らない。
そんな所は、自分のノートパソコン持参になる。
古くても機器やソフトが同じであれば、一通りの説明で済んだ。
しかし、持ち込まれたパソコンはメーカが違い、ソフトのバージョンが違うまちまちだ。
Vistaが有り、Xpが主流でMeがちらほら。
Office2000から2007があり、入っていないものもある。
“どうすりゃいいんだ 思案橋”講座の進め方に頭を悩ませられる。
仕方が無いからXpを中心に教習を進め、異なる時はその都度対応してゆく。
時間が掛かる。
「ここはWord2003の説明だから他の人は休んでてください。」
「今度は2007だよ。そのパソコンの人だけ操作してくださいね。」
パソコンバイリンガルである。
区別しながら説明しているが、聞く方はごちゃ混ぜで聞いてしまうから始末が悪い。
「アレー何でこうなるの。」素頓狂な声があがる。
考えられない結果が起きている。
「さっきの説明通りにしていたら、こうなってしまったんです。」
「貴方のソフトはWord2003だから、どこにも今の説明とは合わないんだよ。」
「だって、ここをクリックしてといってたわよ。」
「似ている所もありますが、20032007は違うんです。」
[元に戻す]をクリックして戻しの操作を教える。
何回かクリックしている内に、「あ、戻った」と、当人は大喜び。
その間、教習は中断しているから、素直には喜べない複雑な思いで次に進む。
「いいですか。自分のパソコンのOfficeは、2000なのか2003なのか叉は2007なのか、確かめて操作をしてください。」
「ハイ、ハイ。」と返事はいい。やれやれ、混合教室は疲れる。

セキュリティソフトは更に混乱である。
購入したまま試用セキュリティソフトの更新をしないでいる。
2年も3年も経っているから始末が悪い。
「パソコンを購入したお店でソフトを購入して、最新状態にして置くのがマナーです。」
「子供のお古でもそうしなければならんかね。」
それでも続くのは、元気にパソコンに取り組むやる気と、明るい笑顔に支えられて居るのかも知れない。がんばれ中高年!明日の未来は無いけれど。

2011年6月18日土曜日

カルガモの兄弟愛ーその後

雛カルガモの健気な行動その後であるが、F自動車会社のOBから会社に連絡してもらった。
どの様に処置されたか、今日行ってみたところ雛の姿は無かった。
しかし、どうして地表から4.50センチも深い水槽を住処としているのか、親鳥の行動が分らない。
雛たちを外敵からは守られるが、緊急事態になっても出られない場所である。
水槽だから天蓋は無く、日照、雨などを遮る物は無い。
46時中泳ぎ回って居なければならない。

自動車会社が西に拡張する前は一面の田圃で、田植え時期などは青々とした風景が広がっていた。
今でも当時の用水跡が住宅地の中に残っている。
大雨などの時には排水路となっているが、普段の手入れはされていないから発砲スチロールとか、落ち葉が堆積して堰き止められている状態である。
親カルガモには、そこで暮らしていた遺伝子が代々伝わり、習性でそこに来るようになっているのであろうか。
青々としていた田圃があった当時の記憶が、何の疑念も無くそこに引き寄せるのであろうか。
それでは余りにも悲しい習性である。
鮭が放流された場所が汚染されていても、忘れずに利根川を遡上して戻るのと同じなのか。

人間は、状況判断が出来るからそうした事にはならない。
経験則によって、危険から身を守る事が出来る。
と信じられてきた事が間違っていた事に気付かされたのが、原子力発電所の事故である。
広島や長崎に落とされた原子爆弾のエネルギーの基と、原子力発電のエネルギーの基は違うものであると理解していた。
例え同じ構成物質であるにしても、発電に使用する構成物質は安全で、例え事故が起きても放射能で汚染されるとは思っても居なかったし、そんな事の対策は日本の最先端技術で解決されていると盲目的に信じ、ほぼ無関心で原子力発電所から送られてくる電気を浪費していた。

そこには、カルガモの悲しい習性を哀れんでいる人間の愚かしさこそ、哀れむべきご都合主義なのかもしれない。
より以上の効率とか、発展とかを声高に唱え、世界経済から取り残される危機意識を煽り立てられて居たのが恥ずかしい限りである。

今こそ、家康の「不自由を常とおもへば不足なし」の精神を見直すべき時に有ると思う今日この頃であるが、本日もささやかに回転すし屋でマグロを食するのであった。
何処で?、無添加くら寿司でした。

2011年6月17日金曜日

カルガモの兄弟愛

朝夕の犬の散歩コースで、時たまF自動車工場の敷地を横切る。
数年前までは生産された新車で一杯となっていたが、今は従業員の駐車場として一部が利用されているに過ぎない。
だから一寸とした広場であり、珊瑚樹や椎木などが植林されて夏などは結構な木陰となり、犬の散歩にはよく利用されている。
その一角に工場排水の一時貯水槽が有り、2メートル高のフェンスで囲われている場所がある。
そこに毎年カルガモの親子が住み着き、緑色した排水の中を泳ぎ回って居る姿を目撃されていた。
今年も月端頃からか、親鴨と6羽の子鴨が泳ぎ回って居る睦まじい様子を見せていた。
水槽はコンクリート製で天場と水面との差が50センチほど有り、どの様にして中に入って行ったのか、何処で孵化して来たのか不明な事が多いのだが、何れにしても親鳥の後を6羽の子鴨がかわいい鳴き声をさせて泳ぎ回って居た。

4.5日雨が降っていたので犬の散歩も手抜きコースでしていたが、久し振りに回復したので工場の方まで足を伸ばし、鴨親子の様子見に出かけた。
子鴨だけ6羽が水槽の縁を廻っているだけで、親鴨の姿がそこには無かった。
餌でも摂りに留守にしているのか、と思いながら暫らく眺めていたが一向に戻ってこない。
人間が居るので警戒して近寄らないのかと考え、そこを離れる事にした。
翌夕、写真にでも納めて見ようかと再び出掛け水槽を見たら、なんと2羽しか泳ぎ回っておらず、4羽は死んでいるではないか。
親鴨は依然として留守である。

猫や、鼬などが寄り付ける所でもなく、親鴨は一体何処へ飛び去っていてしまったのか。
なぜ子鴨を見放してしまったのか謎が深まるが、餌が無い事ははっきりしているので急ぎ戻り、パンの切れ端を持って水槽の金網越しに投げ入れてやる事にした。
生き残っている子鴨1羽は、餌を求めて水槽の中を周遊しながら水の中に首を差し込んでは廻り、また、餌を求めていたが、パンの切れ端に気付くと此れ幸いと啄ばみ、一口、二口、三口と嘴でパン切れを食い千切り始めた。

暫らくして何を思ったのか、生きてはいるが元気が無く、死んだ4羽に寄り添うようにしていた1羽のところに近寄って行き、その子鴨の後に回りパン切れの方へ押してやっているではないか。
その様子は「あそこに餌があるよ」と、教えている様に見える。
しかし中々巧く行かず、そうこうしていると死んでいる子鴨にも同じ行動をしているのだ。
「おい起きて、餌があるよ」とでも言っているかのような行動を繰り返して居る。
写真はその情景スナップであるが、何処まで分って貰えるか遠景の上に、金網越しのシャッターのためはっきりしないが、それまで餌探しに周回していた子鴨がパンを啄ばんだ後で、元気の無い兄弟の後に回り、後押しをしてパン切れの方へ誘導しようとしている行動である。後が元気な子鴨である。
こんな鳥でも、餌を共有するのか、助け合うのかと、思わせる場面であった。