2010年11月6日土曜日

生タコ始末記

行きつけの魚屋で、「丸政」と言うのがある。
街中の商店街が寂れて行く中で、この魚屋は大層な繁盛である。
最も周辺にスーパーは無いし、競争相手が無いのが強みである。
パソ爺の所から車で15分位掛かるから、郊外店の「マッセイ」の方が近くて安い。
しかし鮮度や、目の前で切り身を作ってくれる点が魅力で馴染みにしている。

パソ爺は酒の肴では、生タコの刺身が好物である。
しかし、なかなか売っていないし、居酒屋で注文しても無いのが普通である。
時たま宴会などで出される事があるが、あのグニャグニャした食感は何とも言えない。
久しくお目に掛かって居ないので「丸政」の主人に聞いた所、時々市場には出るが買う人が居ないので仕入れないとの事。
そこで頼んで置いから半月も経った頃、入荷したとの電話で出掛けるが、渡された品物を見てびっくり。
こっちは刺身状に切り分けられて、今夜にでも一杯やりながら食べられると思い描いて居たから尚更である。
足の付け根が5・6センチ程、長さが3・40センチ位は有る現物がパックに入っているのだ。

切って無いの?と聞くと、簡単だよ、自分でやれるから練習だと思ってやってみたら、と宣う(この「のたまう」はIMEの言語では出ない。)ではないか。
ははん、わかったぞ!。切るのは面倒だし、切り賃を入れると値段が高くなり、要らないと言われたら売れ損なうと思ったか?。
結局1500円払い、其の侭持ち帰って来た。
それを見た妻の第一声、アタシャ気味悪くてそんなもの切れないからね、と来た。
じゃーどうすんだい。このまま茹でダコにするのなら態々粋がって生タコなど買う事も無いのに、という言葉を腹に収め、インターネットが有るじゃないかと起動して検索をする。

Googleは頼りになる。
「レシピー 生タコ」と検索キーを入れると有るは有るは、世の中暇な人間が生タコの蘊蓄をこれ見よがしに投稿している。
その中から分かり易く、懇切丁寧な説明サイトを印刷して生体解剖に入る。

何時間前に獲れたかは知らないが、生きているのだ。
頭が無いのに足は動いている。
水でよく洗い、塩を入れ滑りを落とすために足先から元までゴシゴシ、クニャクニャと揉み洗い。
大きな吸盤の中は、砂があると困るので殊更よく洗う。こうして15分。

皮を剥かなければならない。
出刃庖丁で根元から刃先を入れ、縦に真っ直ぐに入れるがなかなか思う様な訳には行かない。
悪戦苦闘、ようやく身と皮の切り離しに成功する。
皮は蛸飯にしたら、と脇で見ている妻は簡単に言う。

そこで再びGoogleさんのお世話になる。
これも出る出る、ああでもない、こうでもないと投稿されている。
簡単なサイトを印刷。
皮は、切り刻んで硼酸と番茶で5分位煮て灰汁だしをする。
後は炊き込み飯の作り方と同じである。

翌朝の仕込みをして、さて本体である。
白身になって俎板に横たわる生タコ。
本来ならこれをスライスに下ろし、わさび醤油で一杯という段取りで始めたのだが、時間も経っているためか、草臥れて食う気が失せてしまった。
冷凍して、明日しゃぶしゃぶでもするか、と提案すると、そうね、生で食べるのは気持ちが悪いからね、と決まり、ラップして冷蔵庫の中へ。
こうして生タコ解体は大山鳴動して終結。
インターネットまで使い、この数時間のてんやわんやは何んだったのだ。

夕食は、煮込みうどんで終り。

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